こんにちは、音博士(@otohakase1205)です。
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音痴とは「頭の中にある音のものさしが狂ってる」状態です。
原因をしっかり理解して適切な対策を取ることができれば、数週間もかからずに改善・克服することができます。
音痴の「学術的な定義」とは
本記事では、広く学術的に定義されている「音程が取れない」症状を「音痴」として扱います。
「広辞苑(2008)」の音痴
生理的欠陥によって正しい音の認識と記憶や発声ができないこと。また、そういう人。
広辞苑 P.444(2008年)
俗には、音楽的理解の乏しいことや、そのため正しい音程で歌えないことも言う。
「新訂 標準音楽辞典(1966)」の音痴
狭義には音の高さの弁別力貧弱なものを言う。
新訂 標準音楽辞典 P.357(1966)
通俗的には歌唱に際しての音楽的聴覚的因子の貧困に対して意味する社会的習わしもある。
「「調子外れ」を治す(1955)」の音痴
本書では、歌唱に合わせてキー合わせできないレヴェルをあえて「調子はずれ」(もしくは、歌唱の発達障害)と呼び、音感を含めた音楽の全般的な発達障害を<音痴>としました。
「調子外れ」を治す P.22 / 村尾 忠広【著】(1955)
「音楽辞典(1957)」の音痴
音楽辞典では「音痴」は説明されておらず、「調性聾(ちょうせいろう)」を調べるように記載されているようです。
さらに「調性聾」を調べると「みみ」を調べるように記載されており、「みみ」にはこのように説明があります。
例えば音の高さは音の高さはわかるが調性を感じない(高さの違いはわかるのに全部同音の音に感じるなど)という調性聾の問題などもあり…(後略)
音楽辞典 P.149(1957)
音痴の原因
音痴は遺伝せず、環境によって育つ
音痴は遺伝しない
音痴は遺伝しません。
数十年ほど前までは「親が音痴だから子供に遺伝してしまった。」という説や、「先天的な音痴だから治せない。」という話がありました。
確かに、脳や聴覚の障害でどうしても音程が正しく認識できない人もいます。
ですがそれは「持って生まれた障害の結果、音痴になっている」状態であり、「先天的に音痴として生まれたわけではない」と僕は思っています。
環境が音痴を作る
成長速度が速い赤ちゃんがこの「ズレた音程」を聴き続けると、子供は自然と「ズレた音程」を正解として成長します。
その結果「まるで遺伝したような音痴」が完成し、ひどい場合には孫にまで引き継がれることになります。
「音を聴くのが苦手」と「発声が苦手」の違い
音を聴くのが苦手な「認知性音痴」
人の頭の中には、「高い・低い」を判別するものさしがあります。
これを「音感」と呼んでいるのですが、ものさしのメモリは人によってばらつきがあります。
幼少期からピアノやギターなど、調整された音にたくさん触れていた場合、音感は「それぞれの音の違いを聞き取れるように」細かく成長します。
ところが「音楽をほぼ聞かない」「生活環境に音が極端に少なかった(音楽に触れず、両親の声だけで成長した)」場合、音感が成長するメリットがないので、「低い声・高い声・電車の音」のように雑な成長になります。
同じ曲・お手本を聞いてるのに、得られる情報量に大きな差が生まれるのが「音を聴くのが苦手な音痴」です。
発声が苦手な「運動性音痴」
例外的に、「どれだけ音感が鋭くても音痴になってしまう」人も存在します。
「体がイメージ通りに動かない」パターンです。
「野球の解説者」が野球選手のように活躍できないのと同じで、どれだけ音感が鋭くても発声能力が低ければイメージ通りに声を出すことができません。
英語の発音指導のように、口の形や舌の位置をパッと再現できないような症状になってるのが「運動性音痴」などと呼ばれる音痴です。
自分の音痴タイプを確認する方法
音痴のタイプは傾向から予測することができますが、「音感は完璧」「発声は完璧」なんて人はほぼ存在しません。
ほとんどの人は「認知性音痴の部分もあるけど、運動性音痴の部分もある」という結果になると思いますので、当てはまる項目が多くても落ち込む必要はありません。
「認知性音痴」の特徴と見分け方
認知性音痴は「音感が狂っていて音を判別できない」のが原因の音痴です。
「音痴」と言われたことがあるが、実感したことがない
「認知性音痴」に最も多いのは、周りに”音痴”と指摘されたことがあるが、自分にはその実感がない」という人です。
上記の経験が何回かある人は「認知性音痴」である可能性が高いです。
1回や2回なら、「音痴」と言ってきた人がふざけている可能性や指摘した人の音感が狂っている可能性もありますが、何度も言われるようなら、「自分が気付いてない音程のずれ」が存在することになります。
音の違いがあまり分からない
認知性音痴の人には、音感が未発達の人が多いです。
音感が未発達な方は、楽器の音の違い」があまり分からない人もいます。
- 男性と女性の声の違いがわからない
- ピアノとギターの音の違いがわからない
- 同じ楽器の高い音・低い音の違いがわからない
上記のように「他の人が区別できているのに自分だけ区別できない音」がある場合、「認知性音痴」の可能性があります。
「運動性音痴」の特徴と見分け方
運動性音痴は「わかっているのに正しい音が出せない」のが原因の音痴です。
「口笛」なら上手に歌える
運動性音痴には、「高い音は口を大きく開けてしまう」タイプや「口を横に開いてしまう」など、「口の形で音程を調整する癖がついている人」がいます。
この症状の人は「口によって音程がバグっている」状態なので、口笛や鼻歌のように「口の形が影響しない歌い方」なら音程が取れることがあります。
もしこの症状に当てはまる場合は、音感ではなく発声方法で音程が狂っている可能性があります。
「音程ずれてるな…」と自分で分かる
録音した自分の音声を聞いてみると、自分のイメージ以上に音程が狂っていることがあります。
聞いてる音に合わせて出力している「自分の音程」に乖離がある状態です。
音程のずれを自覚できる場合、「頭で想像した音程は正しいのに出力する過程でズレが発生している」可能性があります。
この場合も、「運動性音痴」として判定することが可能です。
音痴の治し方
音を聴くのが苦手な「認知的音痴」の治し方
認知的音痴、つまり「音感が無い音痴」の場合は音感を鍛えるトレーニングがそのまま音痴克服へつながります。
普段聴かない音を聴く
意識的に音感を鍛えるのが難しい場合は「色々な音楽に触れる」だけでも効果があります。
- ジャズやクラシックなど、たくさんの音が鳴っている音楽
- オペラや合唱など、自分が普段使う音とかけ離れた音
- 民族音楽やフォークロアなど、日常生活で触れない音楽を聴く
触れる音を増やすことで、特別意識せずとも音に対する感受性を豊かにできます。
特にまだ小さいお子様など、意識的なトレーニングが難しい場合はまず「触れる機会を増やす」ことから始めるのがおすすめです。
音感トレーニング
音感は、女性の声が聞こえた時「これは高い音だ」と判別するような「聴いた音を自分の知ってる音に分類する」能力です。
本格的に強化する場合、「音感トレーニング」は避けられません。
難しいトレーニングではありませんが、ある程度は継続が必要です。
音感トレーニングでは、以下の順番で作業を進めていきます。
具体的な音感トレーニングの方法は、「音感の鍛え方」にまとめてあります。
発声が苦手な「運動性音痴」の治し方
「楽器は弾けるし、音感もあるのに歌だけが下手」という人は、根本的に声の出し方を確認する必要があります。
大抵の場合、日本人の発声は「胸式呼吸」という方法で行われており、これは「少ない息で効率よく音を出す」技術に長けています。
日常生活を送る上では全く問題ありませんが、歌う際には「声を出す」だけではなく「綺麗な声」や「狙った高さ」のように追加技術が求められます。
これらの要素を同時に実現するためには、「効率悪くても良いから、まず自由度の高い声の出し方」に切り替える必要があり、これが一般的に「腹式呼吸」と呼ばれています。
「発声がおかしい」と感じる場合には、まずは腹式呼吸など簡単な声の出し方を見直してみるのが近道です。
腹式呼吸については、こちらをご覧ください。
まとめ
最初に述べたように、ここで話している音痴とは「音程が取れない音痴」です。
世の中には「リズム音痴」のように音程以外の部分で音痴と呼ばれる症状もあります。(それらはまた別記事にて解説いたします。)
音博士の研究所では、「歌が上手くなりたい」という方だけでなく「まず普通になりたい」という方の音痴を克服し「歌って意外と楽しい」という感覚になれることもサポートしております。
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